『PAD MAN 5億人の女性を救った男』(R・バールキ監督)

今年最初の映画は『PAD MAN 5億人の女性を救った男』。・・・素晴らしい映画でした!!愛する妻のために、そして5億人のインド女性のために、安価で清潔な生理用ナプキンを開発・製造した、インドに実在するスーパーヒーローを描いたお話です。

月経が「穢れ」とみなされてきたインド社会では、現代でもその期間、専用の部屋や家畜小屋に籠もって過ごす地域があるそうです。ナプキンは高価で普及しておらず、ぼろ切れやおがくずで経血処理をするため、生殖系疾患の原因にもなっているのだそう。不勉強なわたしは、まずこの現実に驚愕。経済や流通の問題だけでなく、女性差別の因習がこういう事態を招いているのだと思うと胸が痛みます。

並々ならぬ努力の甲斐あってナプキン製造機を生み出した主人公・ラクシュミのすごいところは、それを自分の利益に収めようとせず、機械を普及させ販売システムを構築して、女性たちの働く場を作り出し自立を促したこと。パートナーとなった聡明な女性・パリーの慧眼と献身なしには成し得なかったことですが、ラクシュミの不屈の精神には新年から勇気をもらいました!

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カタルシツ演芸会『CO.JP』(前川知大×安井順平 作・演出)

来月閉店する六本木スーパー・デラックスにて、イキウメの実験室、カタルシツ演芸会を初体験。演劇とコントの境界を探るというコンセプトのもとに生まれた短いお芝居を7本観られました。贅沢!

安井順平さんご自身も話されてましたが、境界を探るの、難しいですよね。フィクションを生身で演じるという意味ではほぼ同じですし、お笑いコントの中にもシリアスな一瞬があったり、シリアスな劇の中にも笑いはあったりするわけで。結局、内容や形態が同じでも作り手とか演者とか場とか媒体とかで恣意的にカテゴライズされがちで、それって文学の「ジャンル」と近い話だなぁと考えたりして興味深かったです。あ、もちろん、劇場ではツベコベ考えずにたくさん笑ってました!

それにしても、普段舞台でお芝居しているイキウメの役者さんたちが「働き手」としてテキパキ爽やかに公演のお手伝いをされているのには感激しました。映画や朝ドラにも出演されてお忙しいでしょうに。。。ますますファンになりました!

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PLAY:『メタルマクベス disc3』(劇団☆新感線×宮藤官九郎)

『メタルマクベス disc3』、IHIステージアラウンドで観て来ました。

2218年の戦国時代を舞台にした「マクベス」!というだけでもものすごいのに、そこに1981年のヘヴィメタバンド《メタルマクベス》がリンクするというなんとも欲張りな設定。ハチャメチャなはずなのに展開は明快で、ぐんぐん引き込まれました。いつの時代もどの場所でも、一番上に立つ人には血生臭いドラマがありますね。。。

新感線らしいド派手な世界観で始終爆音のメタル、しかも劇場は360°回転しまくり、さらに休憩はさんで4時間、という贅沢三昧の舞台です。弱っている時に観ると、のぼせてしまうかも⁈お気をつけください〜

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MANGA:『春待つ僕ら』(あなしん)

映画も始まって、なにかと話題の『春待つ僕ら』。引っ込み思案なヒロインが「バスケ部イケメン四天王」と仲良くなって、そこにスパダリ系の幼なじみが加わって・・・と設定だけでおなかいっぱいになるオトナも多いかもしれませんが、まったく心配いりません!文句なしにおもしろいです!

ヒロイン・美月をめぐってライバル関係にあるのが、永久くん(1・7巻表紙)とあやちゃん(5・11巻表紙)。このふたりの「好き」が意外と複雑で興味深いんです。

永久くんは美月の真っ直ぐさに惹かれているだけでなく、高校バスケ界のヒーロー・神山さん(=あやちゃん)に負けたくないという思いが強いようです。あやちゃんのお墨付きが永久くんの中で美月の価値を上げていることは間違いなく、それを手に入れることが彼との勝負のひとつになっているのかなと。

一方、大人びた愛を語るあやちゃんは「たかが恋には負けない」と豪語し、美月が永久くんに惹かれているとわかっていつつ、彼女を手放しません。(この噛み合わなさ、あやちゃんのスマートな身のこなしがなかったらただのこわい人かも⁈ )

ふたりともある意味、美月自身の存在を無視しているわけで、、、こういうオトコたち、近代小説の中でよく見かけます 笑。どちらを選んでも、結局美月は美月として、幸せになれないような気がしてきました。

・・・と言いつつ、個人的には断然あやちゃん派なんですけどね!

マンガの映画化は原作が完結する前に全然違う結末に仕上がることも多いですが、『春待つ僕ら』はどうなんでしょう・・・?『デザート』の連載の方でもなんとなく収束に向かっている感じがあり、気になります。個人的には引き続き、あやちゃんを応援したいと思います!

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MANGA:『村井の恋』(島順太)

教師と生徒の“禁断の恋”と言えば、巷では明日最終回を迎える『中学聖日記』が話題ですが、、、個人的には断然、こちらがオススメ!島順太先生の『村井の恋』です!

田中先生(24)のことを大好きな村井くん(17)。でも田中先生は、乙女ゲームのキャラ・春夏秋冬に夢中。ある日イメチェンした村井くんが春夏秋冬と瓜ふたつになったところから、おもしろい方向に事態が進んでいきます。

一般的な“禁断の恋”では、生徒が先生に抱く幻想が原動力になるかと。『村井の恋』ではそこに、先生が2次元のキャラクターに抱く幻想がからまってくるからさぁたいへん。恋愛&青春につきものな「本当の自分」問題が、ハイテンションな展開の中で時々切なくさせてくれます。出てくる高校生がみんな異様に賢くて優しくてかわいいのも、読んでいて飽きないポイントです。

LINEマンガで追いかけていたのですが、迷わず紙でも購入☆描き下ろしページも充実していてトクした気分です〜

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PLAY:『命売ります』(三島由紀夫原作/ノゾエ征爾 作・演出)

三島由紀夫作品の舞台化が続いています。『豊饒の海』も気になりつつ、『命売ります』の方へ。師走はじめのバタバタの中、エンタメを欲していたもので。。。

1968年に『週刊プレイボーイ』で連載されたこの作品は、自殺し損ねたコピーライター・山田羽仁男が「命売ります」という新聞広告を出すところから始まる冒険活劇。自分の命を他人に差し出したはずの羽仁男が最後に行き着くのは、ちょっと意外な場所です。

秘密組織のボス、子持ちの吸血鬼など、くせものだらけの展開は、60年代のゴチャゴチャした雰囲気を覗き見している気分でワクワクします。原作で感じていたその空気が、舞台でもビシビシ伝わってきました。

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FILM:『ライ麦畑で出会ったら』(ジェームズ・サドウィズ監督)

秋に感動した映画、『ライ麦畑で出会ったら』。『ライ麦畑でつかまえて』に惚れ込んだ高校生が、舞台化の許可をもらうために隠遁生活を送るサリンジャー本人を探す旅に出る、というお話。驚くべきことに、ジェームズ・サドウィズ監督本人の実体験が基になっているそうです。

こじらせ高校生ジェイミーにとってラッキーだったのは、まず自分にとってかけがえのない一作に出会えたこと。そして、心が広く聡明なガールフレンド・ディーディーと出会えたこと。そして、知的な大人たちから過不足のないサポートを受けられたこと。

実は、鬱屈とした日々からジェイミーを救う鍵は『ライ麦』の舞台化ではなく、お兄さんとの関係と向き合い、それを自分の物語として紡ぐ行為にありました。それに気づかせ、語るきっかけを与えたサリンジャーと教師たち、素晴らしいなぁと思います。

ジェイミーとの対話で展開されるサリンジャーの読者論も、とても興味深かったです。

村上春樹訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と、プログラムを並べてみました。まだ公開中のようなので、青春を補給したい方はぜひ!

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MANGA:『アオハライド』(咲坂伊緒)

ハツメイの本棚管理人のわたくし、もともとは高校の教員でした。実はご縁あって、秋から再び私立高校で現代文を教えています。数年ぶりに接する高校生、、、本当にキラッキラでかわいいです!あの3年間のかけがえなさ、やはり特別だと思います。

そしてまた、そんな高校生たちと文章を精読することの楽しさったら。宮沢賢治、梶井基次郎、志賀直哉、川端康成と文学作品の扱いも多いので、よろこびもひとしおです。

さて、センセーのくせに、マンガの話ですみません。でも、アオハルを語るにはやはり『アオハライド』。青春ものの金字塔ですので!

「青春は、まちがえる。」

「行ったり来たり、上等!」

ほんとに、そのとおりだと思うのです。本人たちを悩ませるその揺らぎが、遠くから見守る者たちの目にどれだけ眩しく美しく映るか。

そしてそして、「吉岡さんが向いてる方が前向き」など、最強2番手男子・菊池冬馬くんの名言の数々もたまらないです。(個人的には、菊池くんが大活躍する9巻を神巻と崇めてます)

それにしても、咲坂伊緒先生の作品は、見事にみんな帰宅部ですよね?『アオハライド』だけでなく、『ストロボエッジ』も、『思い、思われ、ふり、ふられ』も。なんでしょう?青春=部活へのアンチテーゼ?・・・そんな意図だったらおもしろいなと、勝手に想像して楽しんでます。

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FILM:『レディ・バード』(グレタ・ガーウィグ監督)

映画に映し出されるクルマでの送迎場面が、最近やたらと気になっていました。どんなに反発していても、どんなに腹を立てていても、迎えに行ったり送ってもらったり。自分にまったく経験がないので、なんだかおもしろいなと。

『レディ・バード』は、主人公がクルマからバンっと飛び出すシーンから始まります。親の運転するクルマで癇癪を起こして、ムチャして骨折するという若さ全開の女の子です。そしてさらに、親のつけた「クリスティン」のいう名前を拒み、周囲に「レディ・バード」と呼ばせている、自我強い系の女の子です。そんな女の子が、自分で未来を選んで、遠くから親を想い、親のつけた名前を受け容れる。単純にまとめれば、『レディ・バード』はそんな成長物語でした。

個人的に好きなのは、免許を取った彼女が自分でクルマを運転しながら、住み慣れた町を新たな目で眺め、母親の見ていたであろう景色に思いをはせるところ。クルマにはドラマがあるなぁ、満を持して免許を取ろうかなぁなどと、考えたりしています。

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FILM:『万引き家族』(是枝裕和監督)

カメラを構えたら自分の足が入っていて、なんとなく気に入ったのでそのまま撮っちゃいました。

是枝裕和監督、大好きです。カンヌ国際映画祭パルムドールの受賞、おめでとうございます!

『幻の光』を観たシネ・アミューズも『ワンダフルライフ』を観たシネマライズもなくなってしまったけれど、あの時の感動は今もまったく色褪せていません。時間を持て余していたあの頃に日本映画が盛り上がっていたのは、ラッキーだったなぁと思います。

『万引き家族』を語る言葉が、正直見つかりません。それでとりあえずズレたことを書いてみたりしましたが、やっぱりまだ見つかりません。新聞やニュースやドキュメンタリーで見聞きすることが詰まっていて、切り口はたくさんあるのだと思います。でもそういうワードで語る気持ちにはなりません。ただ、驚いて、辛くなって、温かくなって、静かに心に残っている。今は、そんな感じです。

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