「エッグ」

「オリンピックはいつのまにかスポーツマンの祭典ではなく、もう一つの戦争になってしまった。」

 

こんな寺山修司の言葉を、オリンピックイヤーに生き返らせてしまった野田秀樹氏。

架空の未完原稿を確信犯的な誤読を重ねながらコミカルに展開させ

731部隊にまでつなげてゆく新作「エッグ」は、

近作には珍しく少々ペダンティックなたたずまいでもあります。

音楽・スポーツ(≒娯楽)と大衆、ナショナリズムのつながりから

ナチスが透けて見えるような予感は観劇前からあったのですが

(そして「宣伝映画制作」のくだりではレネ・リーフェンシュタールがはっきりと浮かんだのですが)、

それが日本史に結び付けられてゆくとは、正直予測できませんでした。

自らの歴史認識の甘さを、改めて反省。。。

それはさておき、本作は椎名林檎さんの音楽監修でも話題になっていますね。

定評のある深津絵里さんの歌唱力と抜群の可愛らしさが

作品が内包するシリアスさと結合することで生じる異化作用も、「エッグ」の大きな魅力。

難しいことを考えなくても楽しめる、

そしてふと、そんな「大衆」の無思想性こそを批判的に見返すまなざしに気付かされる…、

さすが野田作品、やはり一筋縄ではいきません。

 


リアルなファンタジー

ドイツ出張から帰国した週末、

写真美術館の所蔵展「自然の鉛筆」をのぞいた後

「夢売るふたり」を観て来ました。

西川美和監督の作品は「蛇いちご」からすべて観ていますが、

よく言われるとおり「モノに語らせる」のがとても上手。

視線の注がれた指先、危うく放り出された包丁、夫の足の甲に載せられる妻の足・・・

どれも存在感たっぷりで、雄弁です。

実は現実離れした現代のファンタジーが

生々しいリアルさを呈示できる理由は、

そういうモノたちの記号化に成功しているからなんだろうと

改めて感じ入りました。