『職業としての小説家』

本

新刊『職業としての小説家』。「小説を書くことに関する、僕の見解の(今のところの)集大成みたいなもの」と村上春樹自身が言うとおり、小説や小説家をめぐるさまざまな語りが詰まった1冊です。

「デイブ・ヒルトンがトップ・バッターとして、神宮球場で美しく鋭い二塁打を打ったその瞬間に」、ふと「そうだ、僕にも小説が書けるかもしれない」と思ったとか、「読者にメインラインをヒットすること」が重要だとジョン・アーヴィングに言われたとか、「物語」は「人の魂の奥底」にあり、「小説を書く」とは「その場所に降りていくこと」なんだとか、すべてがかっこよすぎる上にかなり独特なのですが、それらの言葉が不思議と心地よい温度でスーッとカラダにしみ込んできます。

キザ(死語?)だけど大まじめで、嘘をつかない人。荒木経惟が撮影したカバー写真も手伝ってそんな書き手像が浮かび、村上春樹という作家をますます好きになりました。やれやれ、です。〔K〕

 

村上春樹『職業としての小説家』(スイッチ・パブリッシング/2015.9)

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秋支度のオレンジ

広

9月30日東京盃、10月1日レディスプレリュードと、TCK(東京シティ競馬)では2日連続で重賞トゥインクルレースが開催されます。

新しいポスターは、その2レースのお知らせ。全面オレンジの世界をつくるため、今回はCMYKに「蛍光オレンジ」のインクをプラスしました。通常の4色インクによる印刷の場合、その掛け合わせで色を表現します。オレンジの色はM(マゼンダ)×Y(イエロー)で出しますが、それだとどうしても彩度が落ちてしまう。そこで混ぜ合わせではなく、100%オレンジの特色インクを投入して、濁りのない明るい色味が出るようにしています。斎藤さんと剛力さんにも少ーしだけオレンジをのせて、暖かな世界に包まれていただきました。画面でも鮮やかですが、印刷された紙のポスターは一段とキレイ!なかなかの存在感です。

大井競馬場は現在改築工事中。ますます快適で美しい施設にパワーアップしています。秋の夜長は、ぜひトゥインクルレースへ!〔K〕

///グラフィック・スタッフ///

企画制作:ハツメイ+ロックンロール・ジャパン+京王エージェンシー

CD+AD:青木二郎(ハツメイ)

C:斉藤尊司

D:福井信行、佐藤有途(ハツメイ)

PH:皆川聡

PR:湯川篤毅(ロックンロール・ジャパン)

PM:伊藤馨吾(ロックンロール・ジャパン)

レタッチ:福井修(フォートン)

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ひとくちで、ドラマ。

広

きちんとお酒を選ぶ人って、かっこいい。なんでも自分で丁寧に考えて、味わって、豊かな時間を過ごしている感じがします。

そんなふうに人生を楽しむ人におすすめのビールが、「GARGERY(ガージェリー)」です。

最高のコンディションでお客様に届けるため、小売りをしていないので、取り扱っているバーやカフェ、レストランに自分で逢いに行かないと飲むことができません。古代の角杯に由来するリュトン・グラスでいただけば、おいしさもまた格別。時間の経過とともに変化してゆく味と香りを、最後のひとくちまで楽しむことができます。

理想と信念に満ちたこちらのブランド、ご縁あってウェブサイト・リニューアルにおけるメインビジュアル制作のお手伝いをさせていただきました。イラストは新進気鋭の若手アーティスト溝尻奏子さん、AD/D/Cはハツメイです。

ガージェリーのひとくちが与えてくれるドラマティックな体験を、多くの方に伝えられますように。〔K〕

プレミアムビール「GARGERY」ウェブサイト(ビアスタイル21)

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こちらは秋限定ビジュアルです☆


グッドバイはハッピーエンドで。

舞

KERA・MAPの『グッドバイ』を観ました。原作は太宰治の遺作です。

始まってすぐに浮かんだのは、植田正治の写真。次に、市川崑監督『黒い十人の女』。喪服、砂丘、シュールな群像、ビジュアル的にはそんなイメージで、なるほど!と勝手に納得しました。

『グッドバイ』は、インテリダメ男の田島が、鴉声でガサツだが高貴な美しさを秘めるキヌ子を偽の美人妻として雇い、自分の愛人に見せつけて相手に諦めさせる…というお話。確かに、『黒い~』とは愛人つながりが。しかも、田島は戦後の雑誌編集長、『黒い~』の風松吉は60年代のTVプロデューサー。なんだか共通するものを感じます。未完小説を書きつなぐ補助線が、そこにあったのかもしれません。(KERA版『黒い~』も必見!)

それにしても、太宰のギャグ(?)は劇場でも大ウケでした。キヌ子の「ゲスな駄じゃれ」、やっぱり可愛いです。KERA脚本にも馴染んでいて、原作に忠実な前半と完全創作の後半と、見事にまとまったハッピーエンドでした。〔K〕

 

KERA・MAP#006 『グッドバイ』@世田谷パブリックシアター

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『しろいろの街の、その骨の体温の』

本

「私たち、骨の中で暮らしてるみたい」。開発中の新興住宅地に住む小学生の結佳は、度々そんなことを考えます。

成長痛で疼く自分の肘や膝と、知らぬ間に拡がっていく自分たちの街。タイトルにも示される「骨」と「道」のアナロジーは、成長に痛みが伴うこと、そしてその成長が当人たちの意思と無関係に進んだり止まったりすることを、読み手に思い出させます。

結佳は無難な生活を望む控えめな女の子ですが、隠し持つ自意識と性的欲求、身体的(未)発達への嫌悪、他者への批評的視線には、読みながらたじろいでしまうほどの強さが。同じ習字教室に通う伊吹を「おもちゃ」にする「ねじれた欲望」や、スクールカースト内での苛烈なサバイバル劇も迫力満点です。

微熱のこもる「しろいろ」に絵画のように配置される血の赤、墨汁の黒、静かな夜の闇、コンクリートの灰色からのぞく雑草の深緑、桜を背景に紅潮する頬のピンク――。苦しくて美しい、ステキな小説でした。〔K〕
村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』 (朝日文庫/2015.7)

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What We See When We Read

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本が好き、本屋さんが好き、という方が最近また増えているようです。電子書籍も便利ですが、やっぱり自分の指でページをめくっていく方がしっくりきますよね。

『本を読むときに何が起きているのか』は、タイトルのとおり「読書体験」そのものに迫ろうとする一冊です。著者はアメリカで活躍する装丁家で、全体の半分くらいは絵(写真・図版)。「読書体験」の可視化に挑む著者の熱気が全ページに溢れ、読者を巻き込んでいきます。

本書では、「読書体験」を「意識そのもののようなもの」、「つまり不完全で、部分的で、かすみがかっていて、共同創作的なもの」と意味づけます。「読書」は作者に提示された文字情報を解読する行為ではない、全体を見通しながらページをめくり自己の想像を味わう体験なのだと捉え直す時、読者の自分が霧の中を進む冒険者のように思えて、少しうれしくなりました。

ちなみ画像はオリジナル「寄本細工」!思い浮かんだ本たちを、並べてみました。〔K〕

 

ピーター・メンデルサンド著/細谷由依子訳

『本を読むときに何が起きているのか ことばとビジュアルの間、目と頭の間』(フィルムアート社/2015.6)

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結晶としてのポスター

広

今年、東京シティ競馬(TCK)の広告制作でクリエイティブディレクターを務めている青木。もちろんどの媒体も大切なのですが、アートディレクターを兼務する立場として特に力を入れているのがポスターです。

企画やコピー、サムネイルの制作を経て、撮影、写真のセレクト、カンプ制作、レタッチ、仕上げ、入稿、印刷…と、1枚作るのにも多くの工程、多くの方々の技と時間と想いが必要になります。そんな結晶を最適な形で定着させるため、最後まで油断できません。TCKのお仕事では、皆川聡さんが撮ってくださる美しい光の表現が最も効果的に見えるインクを選び、CMYKに1色プラスして迫力が出るようにしています。ちなみに今回はシルバー。キラキラさせたい部分と、シャープに見せたい部分と、配分も工夫しています。(星光社印刷さん、いつもありがとうございます!)

競馬の祭典JBCのポスターは、東京モノレールで先行掲出中です。11/3はぜひ大井競馬場へ!〔K〕

 

///グラフィック・スタッフ///

企画制作:ハツメイ+ロックンロール・ジャパン+京王エージェンシー

CD+AD:青木二郎(ハツメイ)

C:斉藤尊司

D:福井信行、佐藤有途(ハツメイ)

PH:皆川聡

PR:湯川篤毅(ロックンロール・ジャパン)

PM:伊藤馨吾(ロックンロール・ジャパン)

レタッチ:福井修(フォートン)

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夏の出会いを3つ。

美

今日は、夏の3つの出会いについて。

映画では『海街diary』や『ボヴァリー夫人とパン屋』、舞台では『草枕』『100万回生きたねこ』『五右衛門vs轟天』(!)など、楽しませてもらった作品はいろいろあるのですが、この3カ月は美術館での出会いの方が印象的に残っています。

まずは近代美術館で開催中の「これからの美術館事典」。その名のとおり、美術館に関係するキーワードを軸に会場全体を事典に見立てて構成した展覧会です。コンセプトも作品選びもスタイリッシュで、楽しめました。

次は、「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50 年の軌跡」(原美術館)。トゥオンブリーファンのわたしにとっては、本当に贅沢な空間でした。(カタログが10月に届くので、またその時に…)

最後は、今城純さんの写真展『Pastel wind』!ポルトガルの街や海を写した作品はもれなくキラキラ可愛くて、同名の写真集もとってもステキです。

この秋も、よい出会いに恵まれますように。〔K〕

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想いが可視化されるまで。

想いや考えを頭の中でまとめる時、誰しもなんらかの形で言葉に頼っているように思います。でもそれを表に出す時には、文字、音声、絵、動作…得意な方法がさまざまありますよね。わたしはその中でも、「絵」がものすごく苦手。だからこの「青南ハッケン伝」の扉をつくる時にも、周りにかなり苦労させてしまいました。

「ハツメイ→ハッケン→『八犬伝』→読本の表紙」という発想の流れと、「ハツメイの構成要素としてのさまざまなトピックが混在している感じ」というざっくりしたコンセプト、加えて「モダンな和」というイメージ、さらには「珠がドットみたいに可愛く見えたらいいな」「ビリヤードみたいに動かせる?」「花が咲く感じもいいかも」というミーハーな要望・・・。

こんな勝手なリクエストをうまく調理して今回のビジュアルを作ってくれたのは、ハツメイ2年目の佐藤くんです。デザイナーってすごいなぁ、大変だなぁと、いまさらながら感心したマネージャーでした。〔K〕

「南総里見八犬伝 表紙集(003)」(電子展示会「国立国会図書館60周年記念貴重書展」) http://www.ndl.go.jp/exhibit60/data/T/029-hyoshi/index.html

・・・K作サムネイル

 

完成版。ウェブサイトTOPは、GIFアニメになっています。


小さな窓をめざして。

株式会社ハツメイのブログ、プチリニューアルしました。このたび正式に(?)社内ブログ担当に任命された、マネージャーのKです。よろしくお願いします。

さて、そこで始まったのが、「青南ハッケン伝」。名づけたわたしが言うのもなんですが、正直、ビミョーなネーミングです。でも、「ハツメイ」ではなく「ハッケン」くらいが見習いの自分にはしっくりきますし、「ハッケン―デン」とつなげて口にした時の安定したここちよさには抗いがたい魅力がありました。本家『八犬伝』のような風格も、儒教的な要素もエンタメ性も、ロングランだって期待できないただのブログですが、お付き合いいただければ幸いです。ちなみに、PC版ウェブサイトの扉では、本家に想を得た8つの珠、「広(告)」「映(画)」「舞(台)」「美(術)」「本」「食」「人」「日(記)」が躍っています。

地味で地道な広告デザイン会社の、小さな窓になりますように。〔K〕