FILM:『君の名前で僕を呼んで』(ルカ・グァダニーノ監督)

「君の名前で僕を呼んで」。まずタイトルに、たまらなく惹かれました。恋人どうしの甘い戯れはいろいろありますが、自分の名前で相手を呼ぶ、相手の名前で自分が呼ばれる、こんなにステキな求め合いってないなと。

天才肌の17歳の少年エリオと、24歳のスパダリ系(!)大学院生オリヴァー。ふたりはエリオ一家が夏を過ごす北イタリアのヴィラで出会い、秘めた想いを静かに確かめ合いながら関係を深めていきます。夏の陽、夜の風、光る水、揺れる木々。ふたりのこころと響き合うように、時に爽やかに時に官能的に映し出される豊かな自然が、とても印象的でした。また、結局2番手に回ってしまう女の子たち、エリオの両親、まわりの人々がみな素晴らしい!知的で優しい言葉とまなざしが、胸に沁み入ります。

映画の後、すぐに原作も読了。こちらもすごくよかったのですが、、、切ないを通り過ぎて、複雑な気持ち。監督がすでに構想中という続編では、ふたりの甘い戯れと「痛み」がどう描かれるのか、今から楽しみです。

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0430


FILM:『BPM ビート・パー・ミニット』(ロバン・カンピヨ監督)

性自認や性的指向についての考え方は、日本でもここ10年くらいの間に大きく変わってきました。匿名/記名の声が無数に行き交い、行政や企業の動きがその都度届けられる環境。LGBTQについての理解の深まりに、今日のメディアが果たしている役割はとても大きいと思います。

「BPM」は、90年代初頭のパリが舞台。HIV感染者への不当な差別や環境を改善するために闘った活動団体「ACT UP」の実話から生まれた映画です。SNSはもちろんインターネットもない時代に、さまざまな問題や意識を抱えた人々が実際に顔を合わせて意見をぶつけ合う。偏見の溢れる社会で身分証と薬を必携して大胆に行動を続け、警察の拘束も恐れない。彼らは、自分たち、仲間たちの生のために、自らの肉体を惜しみなく投げ出します。企業の欺瞞や世間の「無知」をあぶり出そうとする力強い生き方に、憧れにも近い気持ちを抱きました。

映像も美しく、ビート・パー・ミニットな音楽にも独特の心地よさがあります。ラブストーリーとしてもステキなシーンがたくさん。143分、あっという間でした。

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0423


PLAY:『百年の秘密』(ナイロン100℃)

ナイロン100℃「百年の秘密」。とてもとてもステキな舞台でした。こんなにすばらしいのにどうして初演時の記憶がないんだろう・・・と、ハツメイのブログを見返してみたところ、2012年のわたしは「塩分ひかえめで雑味もない、尋常でないヘルシーさ」なんて書き付けていて。。。この舞台の奥行きを感じ取れていない、まったくもって生意気な感想でした。

物語の中心にあるのは、家族の暮らしを黙って見守り続ける大きな楡の木です。自分の生死にかかわらず、世界はずっと前から、ずっと先まで、変わらずに存在している。誰かの秘密とか、勘違いとか、失敗とか、そういうものが次の誰かの人生につながってゆく。その大河に果てしないロマンを感じるのは、歳をとったからなのでしょうか。6年前に「ものたりない」と感じた自分のことはもう忘れてしまいましたが、こうしてまた新たな感動を得られたことをうれしく思います。

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0416


MANGA:『セキララにキス』(芥文絵)

ハツメイの本棚、別館より。

芥文絵『セキララにキス』、先日発売された7巻まで揃ってます♪ 前回の別館版『かくかくしかじか』と同じく美大受験が描かれた作品ですが、テイストはまったく違って正統派の青春恋愛ものです。

みんなに好かれるために、つくり笑顔の仮面で個性を封印しているヒロイン千歳。芸大を目指すイケメン樹くんとの偶然の出会いをきっかけに美術予備校に通い始め、ありのままの自分を見せられるようになっていきます。創作活動と、恋愛と。このふたつを通じて自分と向き合い、自分を表現することを覚えてゆく千歳の成長がとても可愛くて、親戚のおばさんみたいな気分で見守っているわたしです 笑。

絵もキレイだし、美術予備校の描かれ方も結構リアルで、まわりの美大出身者にも好評な少女マンガ☆個人的には、千歳・樹くん・樹くんのお兄さんとの三角関係が、もう少し荒れてくれてもいいんだけどなぁ。。。7巻最後に登場した新キャラに期待!

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0415


ART:猪熊弦一郎展「猫たち」

Bunkamuraで開催中の猪熊弦一郎展「猫たち」。描かれている猫たちの愛らしさにときめくと同時に、猪熊氏の表現方法の幅広さにも学ぶところが多くありました。

平日だったからか高齢の方もたくさんいらしていたのですが、なんだかみなさんものすごく勉強熱心な感じがステキで。猪熊氏ご自身もそうですが、老いてなお豊かな生活、憧れます。

それにしても、ネコ、かわいい。。飼ってみたいなぁ。。(2枚目の写真は撮影可能エリアにて)

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0412


FILM:『心と体と』(イルディコー・エニェディ監督)

気になっていたハンガリー映画「心と体と」。Filmarksさんの試写会で一足先に観せていただきました!

大筋は、同じ夢を見るという男女のロマンチックなラブストーリー。しかし一方で、自分は自分の生をどこで実感できるか?という問いを投げかけてくる哲学的な作品でもあります。

食肉処理場に流れるたくさんの血、他者に触れる/触れられる体験、ヒロインの頭の中に際限なく蓄積される数字の記憶、動物として生きるもうひとりの(夢の中の)自分。すべてのシーンが「心と体と」というタイトルに結びつき、生の不確かさを突き付けてくるようでした。

東欧の映画らしい独特の世界観ですが、「胡蝶の夢」的なSF感覚も味わえます。静かで美しく、力強い作品です。

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0411


MANGA:『かくかくしかじか』(東村アキコ)

本日はハツメイの本棚、別館より。(注:平たく言うと自宅の本棚です)

『かくかくしかじか』は、東村アキコの私小説的作品。物語は、主人公のアキコが宮崎の田舎町(すみません)から美大を目指し、絵画教室を営む日高先生と出会うところから始まります。その教室のエピソードがとんでもなくおもしろいので、ひたすら合格を目指して精進するスポ根系受験マンガ・・・のような展開を想像してしまうのですが、そう単純にはまとまらないのがこの作品の魅力。アキコは早々に現役合格を果たし、熱くてお人好しで妥協のない日高先生への尊敬と感謝を抱きつつも、自分の求める場所を目指して先生から離れていってしまう。メインで描かれるのはむしろその、離れていく過程の方です。『かくかくしかじか』は、 アキコから日高先生への「ありがとう」と「ごめんなさい」に溢れた作品。 自画像のエピソードに象徴されるように、描いている(今の)アキコと描かれている(昔の)アキコの距離感も絶妙で、読む度に切なくなります。

職業柄、今のわたしの周囲には青木をはじめ美大出身者がたくさん。かつての彼らにも人には言えない苦労や葛藤があったのだろうなぁと思うと、なんだかうらやましいような、気の毒なような・・・のんきな文系受験者には、未知の世界です。

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0406


BOOK:『表参道のヤッコさん』(高橋靖子)

『表参道のヤッコさん』は、ZENTのCM・グラフィックで、たけしさんのスタイリングをご担当くださった高橋靖子さんのご著書。日本でまだ「スタイリスト」という職業が確立されていない時代に、自ら考え、行動し、大いに楽しみ、カルチャーを作られた様子がいきいきと伝わってくる一冊です。すっきりとした文章にステキな写真も盛りだくさんで、ページを開く度にわくわくしてしまいます。表参道で生活しているわたしにとっては、過去の表参道の姿をうかがい知れるのもうれしい!(60~70年代マップには、ハツメイのある「東京セントラル表参道」も描かれています☆)

最近、表参道、神宮前エリアは工事現場だらけです。今オフィスの窓からも大きなクレーンが2機見えていますし、自宅近くもマンションの建設ラッシュ。オリンピックを前に、街として、またひとつの転換期を迎えているのでしょう。変わる場所も、変わらずにある場所も、それぞれに魅力をたたえた場所であり続けるといいなぁと思います。

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0404


BOOK:『たんぽぽ』(川端康成)

4月から、ハツメイの本棚もプチリニューアル☆インスタグラムとこちらのブログで、これまで以上にブックトークできたらと思っています!

はじめは管理人の個人的な趣味で、川端康成『たんぽぽ』。1964年から68年にかけて書かれた未完の小説です。ヒロインは、愛する人の身体が見えなくなる「人体欠視症」という病におかされた稲子。しかし悲劇のヒロインは、物語中に一度も姿を現しません。その恋人と、稲子の母とが、精神病院に隔離された稲子を想いながらひたすら語り続けるだけ・・・という少し変わったお話です。架空の精神病、閉じ込め、「魔界」、ヒロインの不在などなど、おもしろいところを挙げたらきりがなく、わたしは昔この一作品だけを対象に長い長い修士論文を書きました。。。そのくらい魅力的なのに、残念ながらファンは少ないのか、唯一の文庫版だった講談社文芸文庫も絶版になっています。ちなみに、今回撮影したのは1972年の初版本。装幀は東山魁夷で、さすがに美しい一冊です。

ところで、、、外国文学に疎いわたしは、「四十歳の女は君のために一切をしてくれるだらう。しかし、二十歳の女はなに一つしてくれない」というバルザックの警句を、この本で初めて知りました。(バルザック『谷間の百合』が元のようです。原文とは少し違うみたいですが…。)この一節をずっと忘れられずにいるうちに、いつの間にか「一切をしてあげる」方の年齢に。まぁそれはそれで、楽しいものです☆

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0402